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欧州の鉄道民営化は一度失敗し日本の分割民営化を参考に軌道修正された

北海道の観光について常々実践的な提言をしている「北杜の窓」であるが、今日のアーティクルには1点だけ誤りがある。

国鉄民営化はイギリスなどを参考にしているが、その後、欧州各国で実施された民営化で、分割が行われた国は少ない。それは日本での矛盾を見たからである。

JR北海道、国鉄分割民営化まで遡らないとコトの本質が見えてこないのでは: 北海道観光研究所 北杜の窓

 

残念ながら欧州で行われた90年代の水平分業化による鉄道民営化は完全な失敗であり2000年代以降において軌道修正がなされた。その完全な失敗と言われる最大の原因が2000年に英国で発生したハットフィールド事故である。その後民営化された英国レールトラック社は政府の強い管理下にあるネットワーク・レール社に買収された。この話は鉄道界隈では有名な話で「折れたレール」として書籍が発行されている。超ぶ厚いので相当な鉄道運行ヲタか鉄道歴史ヲタでも無い限り気軽には読めないのが難点だ。ちなみに僕はくじけた。

折れたレール―イギリス国鉄民営化の失敗

 

欧州では様々な鉄道運営形態をEC内で統一する動きが90年代以降にあり「上下分離」方式が採用された。英国のレール保有会社であったレール・トラック社は「下」会社であったが、信号制御や電気設備など技術に関わる部門を分離し(水平分離の一貫)、さらに利益を出す為にメンテナンス費用を削減した。いわば鉄道を部分最適化してしまったのだ。その結果レールが粉々に砕け散る大事故を引き起こした。

日本では国鉄を6つの地域鉄道会社と1つの貨物運行会社に分割する垂直分業化で民営化が行われた。地域間をまたぐ列車運行は減ったが地域会社内で全体最適化される結果となった。

 

欧州は各国で国有鉄道が運営されていたが、列車運行をEC内全域に拡大する必要性に迫られた。これはTGVやICEが他国にまで乗り入れる国際列車であり、JRでいうところの北斗星サンライズなどの寝台列車にみられる会社間運行に当たる。そこで2000年代以降に軌道修正するECが採用した方法が上下分離の「下」は国民の資産として国有のまま保持・保守をし、「上」を民営化させ複数の鉄道OP(日本でいうと第三種鉄道事業者にあたる)を競わせる手法だった。Eurostar社もThalys社も仏鉄道公社や英国ネットワーク・レール社が保有・保守している鉄路の上を賃料を払って走る民間鉄道OP(但し株主は各国の国鉄)である。SNCFやDBは国有会社であるが立場はEurostarやThalysと対等なOPでしかない。

 

鉄道はネットワーク化が鍵である。このネットワーク化は今日の日本では新幹線が担っており在来線は既に複数のローカル線が繋がっているに過ぎない。

毎日数千本の列車が数秒の誤差で走る芸当は鉄道会社が機能毎に分断した状態では絶対に不可能で、機能が分散することない垂直分業化した国鉄分割民営化が成功と言われる所以でもある。欧州は日本の鉄道の分割民営化に矛盾などみてはいない。むしろ成功事例としてやり過ぎた水平分業を改めて「下」を一体化している日本の手法を選んだのである。